膝の安全性に配慮が必要なピラティスエクササイズ
2007年の厚生労働省の報告では、自覚症状を有する変形性膝関節症の患者は約1,000万人、潜在的な患者数までを含めると約3,000万人もいると推定されています。
40歳以上に好発する変形性膝関節症以外にも、「前十字靭帯損傷」「内側側副靱帯損傷」「半月板損傷」など、20～30歳代でも膝の既往歴があるクライアントは多くいらっしゃいますよね。
そして、レジャーやスポーツ、交通事故などで膝の靭帯を痛めたことがある場合、注意が必要なピラティスエクササイズあります。
今回は、安全で効果的な指導に活かす為の、膝の靭帯損傷に伴うリスクについてのお話です。
膝の特徴
膝関節は、脛骨と大腿骨により構成される「脛骨大腿関節」と、膝蓋骨と大腿骨により構成される「膝蓋大腿関節」の総称です。
膝関節の特徴の一つが、不安定な骨構造。
脛骨大腿関節は、脛骨という比較的平面な骨の上に、大腿骨という丸い形状の骨が乗っかっているような構造をしています。
卓球のラケットの柄の部分に、ピンポン玉が乗っているようなイメージなので、とても不安定ですよね。
その不安定さを、周囲の筋や半月板、今回のテーマである靭帯などの軟部組織が補強しています。
これらの組織は、加齢に伴い弱化もしくは劣化してしまい、徐々に関節が不安定になることも変形性膝関節症の患者数は多い理由の一つです。
膝関節の靭帯
このように骨構造としては不安定な膝関節。
安定性を高めるためには多くの靭帯が存在していますが、まず押さえておきたいのが、前後左右の安定性に重要な役割を担う、「前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靭帯・外側側副靭帯」です。
今回は、既往歴がある場合に、ピラティスエクササイズにおいて注意が必要となる、「後十字靭帯」と「内側側副靭帯」の損傷について確認していきましょう。
▼後十字靭帯
後十字靭帯は「脛骨の後顆間区の外側面」から、「大腿骨内側顆の外側面後部」に付着している靭帯で、大腿骨に対しての脛骨の後方偏移や、回旋の動きを制動しています。
そのため、後十字靭帯の損傷の既往歴がある場合、片膝立ちや両膝立ちなどの肢位は注意が必要です。
膝立ちでは、脛骨を後方に偏移させる力が加わるため、膝関節の不安定性を誘発し、違和感や痛みを生じさせてしまうことがあるからです。
特にハーフリーニングツイストやハーフニーリングカーフレイズでは、前方荷重を促すために後ろ脚の膝下にストレッチポールなどを置くことがありますが、後十字靭帯損傷の既往歴がある方には、注意が必要だと考えられます。
後十字靭帯損傷は、スポーツ外傷としての割合は少ない疾患ですが、交通事故や転倒によって生じることもありますので、既往歴にある場合はエクササイズの選択に気をつけましょう。
▼内側側副靭帯
内側側副靭帯は「大腿骨内側上顆」から「脛骨内側面」に付着し、最も重要な膝内側支持機構だと言われており、主に膝の外反や外旋の動きを制動しています。
そのため、内側側副靭帯損傷の既往歴がある場合、膝への過度な外反ストレスには注意が必要です。
例えば、ピラティスリフォーマーのサイドスプリットや、サイドプランク内転バージョンなど。
サイドプランク内転バージョンを行うなら、膝伸展位ではなく、膝屈曲位で行うなどの工夫をしましょう。
内側側副靭帯損傷は、膝靭帯損傷のなかで最も合併症が多い外傷であり、前十字靭帯や内側半月板損傷を伴っていることもあります。
これらの合併症があると、膝関節はより不安定な状態であることが考えられます。
ところが、学生時代の受傷などで期間が空いていると、クライアント自身が詳細を覚えていないことも多いので、合併症の可能性も踏まえて下肢のエクササイズを組んでいくと良さそうですね。
例えば、スクワットで膝関節が過剰に屈曲していたり、「Knee in Toe out」もしくは「Toe in Knee out」になって膝関節への回旋ストレスが増加していれば、股関節や足関節の安定性を高めるようなアプローチが必要かもしれません。
今回は、膝関節の特徴と、後十字靭帯や内側側副靭帯損傷の既往歴がある場合の注意点について解説いたしました。
安全で効果的な指導の一助となれば幸いです。
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最後までお読み頂き、ありがとうございました。
理学療法士
中北貴之
