前鋸筋の機能解剖とピラティスリフォーマーエクササイズ
こんにちは。
ピラティスマシンFactoryです。
肩関節が適切に機能するためには、肩甲骨の動きが不可欠で、僧帽筋、菱形筋、前鋸筋などなど、多くの筋が関わっています。
今回は、肩甲骨を肋骨に引き付けるように作用し、円滑に肩甲骨が動くために重要な前鋸筋の機能解剖と、活性化に効果的なエクササイズをご紹介いたします。
肩甲上腕リズム
肩甲骨の動きが大切な理由の一つとして、肩甲上腕リズムがあります。
肩甲上腕リズムとは、肩甲骨と上腕骨の協調的な動きのことです。
ゆっくりとした自動外転運動では、外転30度までは上腕骨のみが動き、その後に肩甲骨の動きも生じるといわれています。
上腕骨と肩甲骨の動きの比率には個体差がありますが、「上腕骨:肩甲骨=2:1」という見解が一般的で、肩を180度挙上したら、120度は上腕骨、60度は肩甲骨が動いているということですね。
このように、肩関節が適切に機能するためには、肩甲骨の動きが不可欠です。
上肢の屈曲や外転などの挙上動作の際、肩甲骨は「上方回旋、外転、後傾」の動きを伴います。
この時に活躍するのが、今回のテーマである前鋸筋。
前鋸筋の機能解剖
前鋸筋は、上部線維、中部線維、下部線維に分かれ、肩甲骨内側全体から第1~9肋骨にかけて、幅広く付着しています。
起始部
・上部線維:第1~2肋骨
・中部線維:第2~3肋骨
・下部線維:第4~9肋骨
停止部
・上部線維:肩甲骨の上角
・中部線維:肩甲骨の内側縁
・下部線維:肩甲骨の下角
神経支配
・長胸神経(C5~C7)
作用
・上部線維:肩甲骨の前傾、外転、下方回旋、
肩甲骨運動の支点形成
・中部線維:肩甲骨の外転
・下部線維:肩甲骨の外転、上方回旋
ピラティスリフォーマーを用いた前鋸筋エクササイズ
上部線維、中部線維、下部線維に分かれ、肩甲骨の外転と上方回旋に作用する前鋸筋。
挙上動作では、肩甲骨の「外転、上方回旋、後傾」という動きが必要になるので、上肢の円滑な運動に欠かせない筋肉です。
仮に前鋸筋の機能が低下して、肩甲骨の上方回旋や外転の動きが悪くなると、その分を他の関節で代償しなくてはなりません。
可動域の広い肩甲上腕関節に負担が増えることが多く、繰り返しのストレスによって生じるのが肩関節周囲炎や腱板損傷といった障害です。
そのため、前鋸筋の活性化は肩関節の運動においては非常に重要だと言えます。
エクササイズでは、「きゃっとばっくハンドアップ」や「フロントリフト」など、床もしくはマシンを押す運動によって活性化できます。
その他にも、前鋸筋は肩甲骨の内転に作用する菱形筋との協調運動により、肩甲骨を胸郭に引き付けるように作用しています。
そこでオススメのピラティスリフォーマーエクササイズが、ショルダームーブメント。
肩の土台となる肩甲胸郭関節の安定性を高めるためには、ショルダームーブメントのように、脊柱の生理的弯曲を保持しながら、肩甲帯に荷重をかけるエクササイズも効果的です。
ショルダームーブメントでは、前鋸筋をはじめとした肩関節周囲筋群を活性化することが出来る他、腰椎骨盤帯の安定性も求められるので、前鋸筋と筋連結のある外腹斜筋のトレーニングにも効果的。
ただし、慣れるまでは肩がすくんだり、肩関節が内旋したりするなど、代償運動が生じやすい種目でもあります。
特に、前鋸筋の活性化を考えると、肩甲胸郭関節のアライメントがくずれてしまうと効果半減ですので、しっかりとフットバーを手で押し、肩甲骨外転位を保つようにしましょう。
コントロールが難しいクライアントには、最初はマットでのきゃっとばっくや、ピラティスチェアでのフロントリフトなど、肩甲帯の安定性を高めるエクササイズを行い、段階的にアプローチしていくのもオススメです。
今回は、円滑な肩関節の運動に不可欠な前鋸筋の機能解剖と、活性化に効果的なピラティスリフォーマーエクササイズをご紹介いたしました。
肩関節複合体の土台として重要な肩甲骨の安定性と可動性に重要な役割を果たす前鋸筋。
機能低下によって肩関節障害の一因にもなりますので、ピラティスをはじめとした、コンディショニングエクササイズで、しっかりと活性化していきましょう!
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最後までお読み頂き、ありがとうございました。
理学療法士
中北貴之