変形性股関節症とピラティスエクササイズの注意点
こんにちは。
ピラティスマシンFactoryです。
今回は、変形性股関節症の現病歴があるクライアントに対する、ピラティスエクササイズの注意点について解説いたします。
変形性股関節症の基礎知識とあわせてご覧ください!
変形性股関節症とは
股関節痛の原因の一つである変形性股関節症。
変形性〇〇といえば、変形性膝関節症が有名ですが、その股関節版です。
日本では120~300万人程度の患者数がいるといわれており、コンディショニング指導においても、遭遇することの多い運動器疾患ではないでしょうか。
高齢化に伴い患者数は増加傾向にあると言われています。
寛骨臼(骨盤)と大腿骨によって構成されている股関節。
この寛骨臼と大腿骨の関節軟骨が摩耗し、軟骨や骨の変形や増殖が生じた状態が変形性股関節症です。
X線で評価する変形の度合いによって、「前期」「初期」「進行期」「末期」に分かれます。
・前期:関節裂隙は保たれているが、骨硬化像がみられる状態。
・初期:わずかな関節裂隙の狭小化がみられる状態。
・進行期:さらなる関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨嚢胞形成がみられる状態。
・末期:関節裂隙は全体的に消失し、骨硬化や骨棘形成が顕著な状態。
一般的に、前期と初期では関節可動域制限は少ないと言われていますが、進行期になると股関節の可動域制限が著明になります。
変形性股関節症の原因
日本人における変形性股関節症の多くは二次性のもので、大半は臼蓋形成不全といって、臼蓋(寛骨側の屋根部分)の発育が不十分なため、大腿骨頭への被りが浅い状態が背景にあります。
臼蓋形成不全もX線画像での評価が必要ですが、臼蓋形成不全は大腿骨の前捻角増大との相関があると言われていますので、指導現場で推察する方法としては、大腿骨の前捻角を評価しておくことが有用だと考えられます。
なお、一次性の変形性関節症とは、明確な原因がないということで、例えば、加齢変化や肥満、筋力低下などによって生じる変形を指します。
二次性の変形性関節症とは、明確な原因があるということで、例えば、股関節の場合は先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全が日本では大半を占めます。
つまり、臼蓋形成不全などによる構造的不安定性が変形につながるということですね。
欧米では一次性変形性股関節症が大半を占めると言われていますが、日本でも最近では高齢化に伴い、一次性の変形性股関節症が増加傾向にあるとされています。
ピラティスエクササイズでの注意点
変形性関節症は進行性の疾患のため、関節への過度な負荷を加えることを避けることが大切です。
股関節であれば、深くしゃがむような動作は負担が大きいので、例えばスクワットを行うにしても、深く行うことは避けた方が良さそうですよね。
その他にも、マーメイドのように、大きな回旋可動性が求められるエクササイズも、股関節の求心位を保てずに痛みを生じる可能性が高いので注意が必要です。
我々運動指導者は診断を下せる立場ではないですし、画像検査や血液検査など様々な検査を行えるわけでもありません。
そのため、疑わしいなと思ったら医療機関受診をすすめることが望ましいと考えられます。
ただ、変形性股関節症の方が初診で医療機関を受診するのは、多くが40歳代~50歳代になってからです。ある程度生活に不自由が生じたり、痛みが強くなったりしてから、初めて医療機関に行くというパターンです。
そのタイミングでは、ある程度変形が進行しているケースもあります。
そのため、変形性股関節症というのは進行性の疾患ですので、運動指導者としては予防のために介入していくことも大切です。
過度前捻があるクライアントには、過度な負荷を避けることはもちろん、腸腰筋や深層外旋六筋、小殿筋など、股関節の求心位を保つ役割を担う筋を活性化するようにしましょう!
最後に、大腿骨の前捻角について解説いたしますので、ご存じでない方はぜひご一読ください。
大腿骨の前捻角というのは、大腿骨体部に対する、大腿骨頸部の捻れのことで、通常は15度程度の前捻があります。
この前捻角が大きい「過度前捻」だと、臼蓋形成不全を伴っていることが多いと報告されています。
大腿骨の前捻角の評価方法としては、「クレイグテスト」が一般的です。
クレイグテストは、股関節中間位において、内旋-外旋何度の位置で、大腿骨の大転子が最も突出するのかを調べる評価。
過度前捻の場合は、20度以上内旋位で大転子の突出を触知できます。
一方、後捻の場合は、内旋10度以下で突出を確認できますので、初めて担当するクライアントに対しては、安全で効果的な指導を行うためにも、ぜひ評価してみてください!
今回は、変形性股関節症とピラティスエクササイズの注意点について解説いたしました。
クライアントの動因を叶えるためうえで、今回の内容が安全で効果的な指導の一助となれば幸いです。
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最後までお読み頂き、ありがとうございました。
理学療法士
中北貴之